シルクはなぜ値段が高いのか?本当に高いのか?西陣の絹糸屋が解説します。

値段の方程式=需要と供給

おはようさん(養蚕)どす。京都西陣絹糸問屋・中忠商店のWEB番頭でございます。

さて、本日は「シルクはなぜ高いの?」についてのお話です。

・シルクは特別だから。
・美しい光沢感があるから。
・昔から高いから。


など、理由にならない理由がネットにあふれていますが、本当の理由は何なのでしょうか?

今回は、その理由を多角的に、現実的に京都西陣絹糸屋のWEB番頭・TES(繊維製品品質管理士)が解説いたします。

【目次】

結論:需要が大きく、供給量が少ないからです。
総論:値段が高くなる理由(需要と供給=神の見えざる手)
各論1:需要が多い理由は?
各論2:供給が少ない理由は?
各論3:そのほかの要因もあります。
終わりに

結論:需要が大きく、供給量が少ないからです(主要因)。

市場経済(自由主義経済)のオークションの論理

結論から書きますと、シルクの需要が大きく(増え続けていて)、供給量が少ない(増えない)からです。

すべての商品価格の決定要因と同じく、市場経済(自由主義経済)のなかでは、需要(欲しい量・消費量)よりも供給(提供・生産できる量)が少ないと、競売=オークションの論理で価格が高くなっていきます。

シルクもこの例にもれず、欲しい人・必要としている人が多く、それを満たすだけの供給ができていないことが価格が高くなっている主な要因です。

同じ天然繊維である「綿」については、シルクよりも需要が大きいものの、それに応じられるだけの供給があるため、原料・糸自体はシルクよりも安価で取引されています。(あくまで平均化、一般化して考えた場合です。)

それでは、「なぜ需要が大きいのか?需要が減らないのか?」「なぜ供給が少ないのか?供給が増えないのか?」について、考えられる要因を見ていきます。

需要と供給による作用以外にも、いくつかの特殊要因がありますので、そちらも合わせて解説いたします。

総論:ものの値段が高くなるのは、なぜ?(市場経済)

神の見えざる手、です。

まず初めに、総論として「なぜものが高くなるのか?」についておさらいします。(不要な方は読み飛ばしてください。。。)

価格統制のない自由経済の中では、ものの値段は「需要」と「供給」のバランスで決まります。

需要が大きい=欲しい人・必要とする人が多い
需要が小さい=欲しい人・必要とする人が少ない

供給量が多い=提供できる物量が多い
供給量が少ない=提供できる物量が少ない

これらの掛け合わせによって、以下のような結果が生まれます。

需要が大きく、供給量が多い = 欲しい人の数に対して十分なものが提供されていて、適度な価格が安定する。
需要が大きく、供給量が少ない = 欲しい人の数に対して出回るものの数が少ないため、欲しい人が競い合って価格が高くなる。

需要が小さく、供給量が多い= 欲しい人の数に対して出回るものの数が多すぎて、安くなければ購入されないため価格が下落する。
需要が小さく、供給量が少ない = 欲しい人の数は少ないが、出回るものの数も少ないため適度な価格が安定する。

この中で、シルクは現在「需要が大きく、供給量が少ない」のグループに属するため、価格が高くなる傾向が続いています。

各論1:シルクの需要が大きい理由

シルク,肌にやさしい,負担が少ない,ストレスフリー,摩擦が少ない
シルクが人間にとって有益・魅力的な繊維だからです。

では、なぜシルクの需要は大きいのでしょうか?

いくつか要因はありますが、

・天然の機能性(通気性がよい、快適性が高いなど)がある
・人の肌になじみのよい、肌にやさしい繊維である
・シルク=高級というイメージがあり、高くても使用したいひとが大勢いる

というのが主な要因で「人間にとって有益かつ魅力的な繊維だから」という理由に集約することができます。

動機づけのスタートとしては、古来から「シルクで作った服を着ると快適だ」とか「シルクの肌着を着るとさらさらしてアレルギーが起きにくい」などの実体験がもとになっているのですが、

※シルクの機能性や肌との親和性(肌にやさしい性質)についての詳細は、こちらの記事(「シルクは肌にやさしい」は本当か?)をご参照ください。

そのような経験が積み重なっていく中で、「シルクは体に良いもの」「高級なもの」「身分の高い人が使うもの」などのイメージが確立され、実態とは少し離れたところで「シルク=高いもの、良いもの」という価値に引っ張られて需要が大きくなってきた、というのが実情ではないかと考えられます。

そのような経緯から、実際の必要(実需)以上の需要が発生しているとも言えます。

各論2:シルクの供給が少ない理由

ずばり、手のかかる農産物だからです。

では、シルク(繭)はなぜ供給量が少ないのでしょうか?

端的に言ってしまえば、手のかかる農産物で生産量が増えないからです。

シルクの原料になる繭は、カイコを養殖管理(養蚕)して生産します。人間が保護管理しているため、自然の状態とは比べようのないほど格段に生育数は安定しますが、すべてが成虫になれるわけではないことや伝染病による死滅のリスクなどもあります。

また、カイコの飼料になる桑は天然のもの(栽培)のため、毎年ごとに取れる量が一定ではありませんし、繭の出来高にも波があります。

カイコが健やかに育ち、しっかりとした大きな繭を作るためには、温暖で快適な環境を確保継続しなれればならず、光熱費や人件費など飼育についてのコストが大きくかかります。

ほかの農産物と同じく、工業化の取り組み(工場養蚕通年無菌養蚕など)のチャレンジもありますが、革命的な飛躍を遂げるような事例は、まだ見つかっておりません。

従来の「養蚕」での飼育・繭供給という方式が続く限り、供給量が著しく増大するということは期待ができない状態です。

各論3:その他の要因について(令和6年現在の状況)

この数年での主要因は、ずばり「円安」と「原油高」です。

糸商の立場から言えば、ここ2~3年でのシルク製品の値上がりの主要因は、ずばり「円安」と「原油高」です。

為替については、

2019年1月1日のドル円相場は、1ドル=111.0円でした。
2024年1月1日のドル円相場は、1ドル=141.83円でした。

比較しやすいように同月同日の相場を書きましたが、本日(2024年2月21日)では、1ドル=150.16円となっており、かなりの円安が進んでいることがわかります。

シルク原料(主に絹糸)は、ほとんどが輸入品のため、海外原価が変わらなくても為替が「円安」に振れると、その分だけ純粋にコストアップになります。

また、原油高により、繭の輸送からはじまり、糸になり製品になるまでの全ての工程の加工賃がコストアップしています。

そのコストアップ分を吸収して、かつ事業を継続していかなくてはならないため、そのほかの分野と同じく、絹業界も全面的なコストアップを余儀なくされています。

終わりに 納得できるベストプライスを

今回は、そのほかの繊維に比べて、シルクがなぜ高いのか、について解説いたしました。

原料商(絹糸商)で、しかもシルクの最終商品を生産販売している立場からの解説のため、そのほかの立場の方からは異論もあるかと思いますが、ものの値段やその価値を判断する一助として、ご参照いただけますと幸いです。

最終的に、その商品が高いのか安いのかを決めるのは、消費者の皆様です。ご自身の価値観に照らして、納得できる価格で、納得できる商品を購入されることを願っております。

中村忠三郎商店.京町家本店
中村忠三郎商店|京都西陣|京町家本店